2014年4月21日月曜日

スタンフォードの自分を変える教室

ケリー・マクゴニガル

スタンフォードの自分を変える教室


邦題は『スタンフォードの自分を変える教室』という他人に見られるのが小っ恥ずかしい題名です。

おそらくハーバード白熱教室を意識し、読めば自分が変えられるという変身願望に訴えた題名なのでしょうが、こういう題名の方が売上伸びるのでしょうか?

ぼくは正直、この題名のおかげで読むこと避けていました。

 
さて、もともとの題名は『The Willpower Instinct』で、

意志力に関して科学的に考察し、

それを実践レベルに落とし込んだ内容となっています。

 
著者はスタンフォード大学の医学部健康増進プログラムにて、

患者がストレスと上手に付き合い、健康的な選択をするためのお手伝いをしている健康心理学者および教育者です。

そのなかで、多くの人が自分の考えや感情、体や習慣を変えようとして苦労している姿に接する中で、

意志力に関する思い込みの多くが、成功を妨げ、不要なストレスを生んでいることに気がつきます。

そこで、スタンフォード大学生涯教育プログラム講座で『意志力の科学』という人気講座を立ち上げ、それをまとめたのが本書となります。

 
Step

(1)  意志力は、『やる力』、『やらない力』、『望む力』の3つがあることを意識する。

(2)  瞑想は、意志力の増強に役立つ

1)     動かずにじっと座る

2)     呼吸に意識を集中する

3)     呼吸をしている時の感覚をつかみ、気が散り始めたら再び意識する

4)     まずは1日5分からはじめ、時間を伸ばしていく

 

Step

ストレスは意志力を低下させる

1)              呼吸をゆっくりすれば意志力アップ(1分間に4-6回)

2)            グリーンエクササイズで意志力アップ(近所を5分間歩き回るだけでもOK

3)             睡眠の確保で意志力アップ(最低6時間は確保)

4)            体にリラクゼーションで意志力アップ(瞑想!)

 

Step

意志力を鍛える

(1)  やるべきこと(やる力)、やってはいけないこと(やらない力)をひとつ決めて具体的な行動に落とし込み、きちんと記録をつけて実行する

(2)  意志力の中でも、最強なのは『望む力』、誘惑に負けそうになったり、諦めそうになったら、いつでもこの力のことを思い出す

    成功させたらあなたにどんないいことがありますか?

    成功させたら周りにどんな恩恵をもたらしますか?

    がんばって続けていけばだんだん楽になることを想像しましょう

(3)  お菓子の代わりにナッツを食べる

体に持久力のあるエネルギーを与えてくれる食べ物を補給

 

 

注意1

意志力のチャレンジを取り組むにあたり、道徳的によいことをしているような気分になると、良いことをした分、悪いことをしてもいいような勘違いを起こします。自己コントロール力を向上させるには、道徳的な善し悪しよりも、自分の目標や価値観をしっかりと認めましょう。

 

注意2

欲望は、行動を起こすために脳が仕掛ける戦略です。欲望は自己コントロールを妨げる驚異にもなれば、意志力の源にもなります。欲望自体は良くも悪くもありません。大切なのは、欲望によって自分がどこに向かおうとしているか、そしてどういう場合なら欲望に従っていいか見極められるかなのです。

 

注意3

落ち込んだり、ストレスを感じると誘惑に負けやすくなります

1)            ストレスを感じる情報を避けましょう(悪いニュースなど)

2)            失敗しても、投げやりにならず、自分を許しましょう

3)            決心しただけで満足してませんか?

4)            ストレス解消法を実践しましょう

 

注意4

将来のことを思い描けずにいると、誘惑に負けたり、物事を先延ばしにしたりしてしまいます。

1)            どんな誘惑を感じても、10分間待ってみましょう

2)            逃げ道をなくす

    決めたことを実行するために手を打っておく

    望んでいることと逆のことをやりにくい状況を作る

    モチベーションを与える

3)            将来のことを思い描く

 

注意5

意志力は周りの人達からの影響を受けます。そのせいで、他者の意志力にも誘惑にも感染します。

 

注意6
 
思考や感情、欲求を押さえ込もうとするのは逆効果で、そうするとかえって自分がどうしても避けたいと思うことを考えたり、感じたり、行ってしまうこと

2014年2月19日水曜日

構造主義科学論の冒険

池田 清彦

構造主義科学論の冒険

 
 

科学哲学に関する内容と言っていいと思います。

 
まず、著者は、徐々に究極の真理に向かって近づきつつあるという既存の科学理論は、

ナイーブな(幼稚な)科学論だと、一蹴します。

 確かに、現在の科学哲学において、外部世界が実在することを、

証明することは困難なのが実情です。



本著では、実在するのは、『わたし』、『現象』、『コトバ(シニフィエ)』であり、

これによって外部世界は説明することができると言っています(多分)。
 

『わたし』は我思うが唯に存在します。

『現象』はア・プリオリに存在します。

『コトバ』とは、恣意性であるが、共通了解可能性を生み出す道具です。

著者は、「コトバとは変なる現象から不変なるなにかを引き出すことができると

錯覚するための道具である」と言っています。

ただ、現象をコトバによりコードするやり方に根拠はないといいます。

コトバの最終規則をコトバによって言い表すことはできない(自己言及のパラドクス)ようです。

 
その上で、二人の間で科学理論が共通了解可能になるのは、

理論構造を作っているコトバのシニフィエ共通了解である必要は必ずしもなくて、

構造の形式が同じであればいい。

科学の客観性も、現象の一致やコトバのシニフィエの一致によってではなく、

現象からシニフィエへの非明示的な変換形式と、

シニフィエ間の明示的な関係形式の2種類の形式により支えられているということです。

 
書かれている内容に関して、理解するのに、苦労しましたが、

内容としては多くのことが書いてあるわけではなく、内容も了解できます。

おそらく、哲学の世界ではこういう考え方に対しても、批判があるでしょうから、

それも知りたいところです。



『コトバ』の重要性にもっと自覚的でありたいと思いました。

症状なり、病名を、コトバに変換した瞬間に、それは実在してしまうのです。

それが、共通了解に役立って行けば良いのですが、

それが錯覚にすぎず誤解を生んでしまったり、

実在させなくてもよかったものを実在させてしまったりする罪を生み出すこともあるでしょう。