2010年6月28日月曜日

反社会学講座


パオロ・マッツァリーノ

反社会学講座


ちょっと内容古くなってきてるし、

かなりふざけた内容なので、紹介するかどうか、迷ったのですが、

まぁ、『面白いからいいか』ってことで取り上げてみました。


内容は、世の中の通説に対して、

実は、その根拠が乏しいことを示し、

様々なデータを示しながら、著者の意見を展開します。

少年犯罪は増えているのか?
日本人は勤勉か?
少子化は本当に問題か?   などなど。


なんといっても、素晴らしいのは、社会の常識に対するつっこみの入れ方です。

医療においても、大切なのは、常に批判的吟味を行うことです。

上司や同僚の意見を参考にしながらも、本当かどうか裏をとり、

教科書やガイドラインに書いてあることの裏をとり、

そして、原著を批判的吟味しながら読む。

なんか、嫌な奴みたいですが、患者さんの利益を守るためには大切なことです。

この本を通して、この、批判的吟味を行うセンスを磨いて欲しいと思います。

たぶん、磨けます。。。最悪磨けなくても、読んで楽しめます。

2010年6月27日日曜日

統計でウソをつく法


ダレル・ハフ

統計でウソをつく法 -数式を使わない統計学入門-


訳者あとがきから抜粋

『統計からウソをつく法』とは、いかにもふざけた書名のようである。
ところが、彼のねらいは、統計もしくは統計学を、ありきたりの
メインストリートからではなく、裏街道からはっきりさせてみようと言うわけである。
この本は人々に本当の統計の使い方を教えてくれるだろう。

抜粋終わり


医師にとって、統計のスキルは必須です。

これは研究に携わるときに限りません。臨床を行うときにも欠かせないスキルです。

主観的にしか経験できない、限られた数しか経験できない症例を通して、

以下に自分の診療を冷静に客観的な視点から観察しながら、

経験を蓄積していくか、そのためにも、統計のスキルは必須といえます。


医師向けの統計学の本は数多く出版されておりますが、

それを紹介するのでは、当ブログの主旨に反します。

今回の『統計でウソをつく法』は1968年が第1版のBLUE BACKSです。

その内容は、わかりやすく、非常に的確であり、統計学の入門書としてうってつけです。

それだけにこれだけの長い時間読み継がれて来ているのだと思います。

ここで学んだことは、そのまま、医療に生かすことができます。



2010年6月19日土曜日

影響力の武器


ロバート・B・チャルディーニ

影響力の武器


アメリカを代表する社会心理学者の1人で、自分自身だまされやすい人間だったという著者が、

多彩な実例を挙げながら、人間心理における承諾のメカニズムを解明していきます。


なかなか商品が売れないお土産屋さん。
店主はいい加減商品が売れないのに頭がきて
『その陳列ケースの品は、全部価格に1/2を掛けておいて』とメモを残しておきます。
担当者は、メモを読み間違い、価格を2倍にしてしまいます。
ところが、陳列ケースの品はほとんどが売れてしまいました。
なぜでしょうか?


著者は、統計学を専門としている友人とともに、
超越瞑想プログラムの入門講座に潜入します。
このプログラムでは、初歩は心の安らぎから、
プログラムが進めば超人的な能力がこの瞑想によって手に入ると勧誘します。
著者と友人は、講義終了後の質問時間に、
講義の中で用いられていた内容が、どう矛盾し、いかに非論理的であるかを、
正確に指摘しました。それに対して講演側は反論できませんでした。
ところが、その議論を聞いていたにもかかわらず、
数多くの参加者はそのプログラムに参加しようとしました。
なぜでしょうか?


クリスマスシーズンから一ヶ月後、町の大きなおもちゃ屋さんで、
人気のあるおもちゃを子供のために買いに行きました。
そこでおなじおもちゃを買いにきている友人に出会います。
なんと、その友人には同じ時期に、去年もその場所で会っていたのです。
なぜでしょうか?


テレビ関係者はどうして録音笑いをこれほど頻繁に使用するのでしょうか?
視聴者は不愉快に感じ、出演者は侮辱を感じると言うのに、
録音笑いを使用すれば、実際の笑いの回数も長さも多くなることが分かっています。
なぜでしょうか?


ある種の自殺が広く報じられた直後には、
商業用飛行機の墜落で死亡する人の数が10倍になることが明らかになっています。
さらに驚くことに、自動車事故による死亡も急増するのです。
なぜでしょうか?


ある病院で、実験が行われました。
会ったこともない医師からの電話による指示にもかかわらず、
適応外使用の薬品の投与だったにも関わらず、
その投与量は適応量の倍であったにもかかわらず、
95%の看護師がこの医師の指示に躊躇なく従おうとしたのです。
なぜでしょうか?


学術雑誌にすでに投稿されており、有名大学の研究者によって書かれた論文を選び、
内容はそのままに、投稿者の名前だけ無名な研究者に変えて、
その論文が掲載された雑誌に再び投稿しました。
このうち9編は投稿済みであることが確認されずに審査に回され、
このうち8編は棄却されました。
なぜでしょうか?


医師は多くの人に影響を及ぼします。

もちろん、多くの人から影響を受けます。

悪い結果を生む影響力を排除し、

良い結果を生む影響力を生み出すためには、

人間がどのように影響を受けやすいかを知っていなければなりません。

2010年6月8日火曜日

ビジョナリーカンパニー


ジェームズ・C・コリンズ

ビジョナリーカンパニー

『真に卓越した企業と、それ以外の企業との違いはどこにあるのか?』

比較対象としている企業はダメな企業ではなく、

金メダリストの企業と銀メダリストの企業を比較して、

ビジョナリーカンパニーの特徴を解き明かします。


ビジネス書の多くは、臨床医学に例えれば、症例発表です。

確かにそういった症例(成功例または失敗例)があったかもしれませんが、

それが普遍的な事実なのか、たまたまその人(企業)がそうであったのかは不明です。

ビジネス書は社会科学を扱っており、自然科学のように前向き研究はほぼ不可能であり、

その内容がどこまで偶然ではなく真実なのかは多くの場合不確定です。

しかし本著は、ケースコントロール研究を行っており、

それゆえに、その結果に説得力が生まれています。


気になった項目です。

☆ BHAG(Big Hairy Audacious Goals);社運をかけた大胆な目標をもつ

☆ 大量のものを試して、うまくいったものを残す

☆ 決して満足しない


でも、まぁ、一番のこの本の魅力は、

理想的な企業の姿に触れることによって、

組織の在り方について考えさせられ、

そして『やる気が生まれる』ことだと思います。

医師の多くが所属している組織である、病院であれ、医局であれ、多くの場合は、

ビジョナリーカンパニーと比較すれば、なんと未成熟な組織かと思い知らされます。

そういったことを自覚することから、少しでも優れた組織になるための

第一歩が始まる気がします。