2010年9月24日金曜日

戦略フレームワークの思考法


手塚貞治

戦略フレームワークの思考法


ビジネス書を読んでいると、フレームワークという言葉がよく出てきます。

フレームワークとは『物事を認知して思考するための枠組み、切り口』のことです。

フレームワークを用いて思考することによって、

『Mutually(相互に)』、『Exclusive(ダブりなく)』、

『Collectively(総合的に)』、『Exhaustive(モレなく)』


頭文字をとって『MECE(ミッシー)』な考え方ができるようになります。


例えば、自分が携わっている事業について検討するとして、

まずは、『外部要因 vs 内部要因』とわけて考えます。

これも1つのフレームワークといえると思います。

外部要因に関してだと、マイケル・ポーターの『5つの競争要因(5F)』があります。

『競合他社、新規参入業者、売り手、買い手、代替品』というフレームワークに当てはめて考えていけば、

外部要因についてMECEに考えることができるし、

他人と思考の共有が簡単になったりします。


本著では様々なフレームワークが

『並列化フレームワーク』、

『時系列化フレームワーク』、

『二次元化フレームワーク』などにわけ、紹介されています。

実際には、ひとつのフレームワークを詳細に知ろうと思えば、

それに関する著書を一つ読まないといけないぐらいの内容ですが、

まずはいろいろなフレームワークに触れてみたい方には本著はうってつけです。


このフレームワークという考え方は、医療においてもなじみのあるものです。

意識障害の鑑別の『AIUEO TIPS』

頭文字にそって、順番に意識障害の原因となりうる可能性を考えていけば

『MECE』に鑑別疾患を検討することができます。

こうした医療系フレームワークを多く知っておくことは必ず役立つはずです。

2010年9月19日日曜日

短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント


石田 淳

短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント


行動心理学の1分野である行動分析学を用いたマネジメントの話です。


以下抜粋

一般的なマネジメント手法においては、結果だけを見ようとする。
これは一見すると正しいように思えるが、大きな間違いである。

結果は行動の連続によって生まれるものだからだ。
結果を変えるには、そこに至る行動を変えなければならない。

行動分析は結果だけでなく、結果を生み出すプロセス、すなわち行動にも目を向ける。
行動を分解し、結果に直結するピンポイントとなる行動を見つけて重点的に繰り返す。
その結果を測定し、自発的に繰り返すようにレインフォース(強化)し、
測定した行動数値を自分にフィードバックして実行率を維持する。

一連の流れをみると、人間の行動原理に基づいた理想的なメソッドであることがよくわかる。

抜粋終わり


以下、要約です。

期待される仕事(行動)ができない理由、以下の2つの場合が考えられる。

① 仕事のやり方がわかってない場合

⇒行動を分解し、チェックリストにして渡す

② 仕事のやり方はわかっているのだが、継続できない場合

⇒行動が増えるように、継続するようにレインフォース(強化)する。


【行動を分解しチェックリストを作る】

(1) 全体を5-6個の大きな流れに分解する

(2) パフォーマンスマップ→プロセスマップ→深堀テーマとさらに細かく分解する

(3) 結果を出すために行動(ピンポイント)を発見するのが重要

鉄則:文書に残す、効果的な好子・嫌子を探す、週一回はチェック、

ルールははっきりと規定(どのように報われるかなど)、サブゴールを設定する

行動とは・・・計測できる、観察できる、信頼できる、明確化されている


【レインフォース(強化)する】

強化因子の特徴:行動の直後に必要、行動を必ず増やす、

人と時によって変化する、回数が多いと効果が薄れる

4:1の原則・・・4つの強化因子に、1つの罰・ペナルティの割合

強化因子は『すぐに』(60秒ルール)→『確実性』


【あなたの会社で実践できる結果を出すために5つのステップ】

(1)ピンポイント

望んでいる結果に直結する行動を見つけ出す

(2)メジャーメント

実際に行動でが起きたかどうか目に見える場合は測定する。
顧客満足度のように測定できない場合は判断する。できる限り数値化する。

(3)フィードバック

効果を実感して自発的意欲を維持するために情報やデータをフィードバックする。

(4)レインフォース

望ましい行動をとった時、すかさずレインフォースして、その行動を継続させる

(5)評価


80対20の法則というのを御存知でしょうか?

その1つの例として、上位2割の人だけが成績を上げ、

残りの8割はパフォーマンスレベルを下げてしまうといったものがあります。

行動分析学マネジメントは、8割の人に2割の人の行動を行ってもらうように

できない人をできる人に変身させるマネジメントと言えます。

その他には、教育現場、研修現場、普段のコミュニケーション等に

応用できるスキルといえそうです。

2010年9月11日土曜日

最前線のリーダーシップ


ロナルド・A・ハイフェッツ、マーティ・リンスキー

最前線のリーダーシップ


ハーバード大学ケネディ行政大学院の教授による著書で、

いかにして人が『リーダーシップ』という行動を起こせるかという、

その具体的な方法について教えてくれます。


そもそも、リーダーシップを発揮するということは、

危険な生き方をするという前提から始まります。

その最悪な結果の1つが暗殺であったりします。

それでも、リーダーシップにリスクを冒すだけの意味があるのは、

周囲の人々の生活をよりよくすることで、人生に目的と意味をもたらすからです。


リーダーシップのたった1つの正解となる方法はありません。

時代、環境、人、様々な要素によって求められるリーダーシップはかわり、

たとえ、同じ条件であっても、別のやり方が求められることもある、

極めて、即興的な要素をもつものだと思います。


それでも、本著が教えてくれるような、戦略的な、リーダーシップのプロセスを、

押さえておくことは、リーダーシップを発揮する時に、

かならず役に立ってくれると思います。


医師も患者さんに最善の結果をもたらすために、

リーダーシップは常に求められるはずです。

時に、価値観、生活態度、長年の習慣を見直すという難題に

患者とその家族を引きこんでしまうことは、リスクの高い仕事となります。

患者の非難を恐れて、面と向かっては調子のいいことしか言わない一方で、

患者の不履行に文句を言っていないで、

こういった難しい作業に立ち向かうためにも本著は役に立つはずです。


以下に簡単に要約しておきます。

いろいろな歴史的な例を用いて、わかりやすく説明していってくれます。


【1】全体像を知る(バルコニー席に上がる

①技術的な問題か、適応が必要な問題かをみきわめる

技術的な問題⇒既存の知識で適応できる、権威のある人が対応できる

適応を必要とする問題⇒新たな方法を学ぶ必要がある、問題を抱える人たち自身で対応
(人々の習慣、考え方、価値基準の変化を迫り、抵抗を招く)

②人々の立ち位置を知る

③言葉の奥に潜む歌に耳を傾ける

④権威者の行動を読む


【2】政治的に考える

①パートナーを見つける

②反対派を遠ざけない

③自分が問題の一部であったことを認める、喪失を認識する、
自らモデルになる、犠牲を受け入れる


【衝突を指揮する】

①適応を促す環境を確保する

②熱気を調整する

③ペースをつくる、よいタイミングで行動を起こす

④将来像を見せる


【当事者に作業を投げ返す】

介入し、結果を評価し、介入を修正し、再評価し、再び介入する


【攻撃を受けても踏みとどまり次のことを検討】

①ほかのどのような懸念事項が問題にかかわる人を忙しくしてしまっているか

②その問題を取り上げることで、どのくらい深く人々が影響を受けるか

③人々は取り上げられる問題をどの程度深く学ぶ必要があるか

④権威ある立場の人は、その問題についてどのような意見を持っているか

⑤パートナーとは別に相談者を見つける

2010年9月3日金曜日

ファシリテーター養成講座


森 時彦

ファシリテーター養成講座

以前紹介した『ザ・ファシリテーター』がストーリーを通しての、

ファシリテーションの概念の浸透が目的であったのに対して、

こちらは同じ著者による、ファシリテーションの具体的な、

スキル、知識の説明が主体となります。

他にも、ファシリテーション関連としては、

『ファシリテーション入門』 堀 公俊
『問題解決ファシリテーション』 堀 公俊

他、多くの関連著書がありますが、

個人的には、本著のスタイルが分かりやすく感じます。


ファシリテーションとは、問題解決や合意形成を促進する技術です。

以下に、『合意形成の方法』について、その内容をまとめておきます。


【1】合意形成のプロセスをデザインする

(1)プロセスをデザインする(Design)

・ゴールを設定する
・最適プロセスを設計する

(2)場をコントロールする(Control)

・批判をしない、信頼関係
・空中戦から地上戦に
・集団思考の落とし穴に落ちない

(3)触発する、噛み合わせる(Discuss)

・フレームワークを利用する
・示唆に富む問いかけ、主張を明確にする

(4)合意形成、行動の変化(Change)

・合意の仕方を決めておく
・具体的な行動に落とし込む


【2】プロセスデザインのポイント

①目的は明確か?スポンサー(支援者・意思決定者・責任を持つ)は合意しているか?

②その日の会議のゴール(具体的なアクションリスト)は明確か?

③メンバーが気兼ねなく発散できる場(紙に書く・リゾート)になっているか?

④収束の方法にメンバーの納得性があるか?(グランドルール/締め切り時間・収束方法)

⑤シュミレーションし、メンバーの反応を予測したか?(予測通りは30%以下、複数のシナリオ)

⑥メンバーのいろいろな反応に備えているか?

⑦「集団思考の落とし穴」に陥らない工夫をしているか?
1)社会的手抜き⇒ポストイットに書かせる、役割を決めておく
2)感情的対立・声高少数者の影響⇒休憩する・フレームワークを使用する
3)集団愚考(集団圧力・集団行動)⇒宣言効果・フォースフィールドアナリシスなど