2010年11月27日土曜日

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら


岩崎 夏海

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら


ミリオンセラーの1冊です。

本屋さんで平積みになっているのを見かけた方もいるはずです。


公立高校野球部のマネージャーみなみは、ふとしたことで

ドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。

はじめは難しさにとまどうのですが、野球部を強くするのに

ドラッカーが役立つことに気付きます。

みなみと親友の夕紀、そして野球部の仲間たちが、

ドラッカーの教えをもとに力を合わせて甲子園を目指す青春物語。


とけっこうハチャメチャな展開ですが、さらっと読めて、意外と泣けます。


こういう本を読むと、どうしても、『病院』とか『医局』という

組織について考えてしまいます。

本の中では、まずは組織(高校野球部)の定義付けから始まります。

そしてドラッガーの、企業の目的と使命を定義するとき、

出発点は一つしかない。

顧客である。

という言葉をヒントに、定義付けを進めていきます。


組織には2種類の顧客があります。

一方は、活動対象としての顧客。

もう一方は、パートナーとしての顧客。

マネージャーみなみは、このパートナーとしての顧客、

部員に焦点を当てて、活動を始めていきます。


病院にとっての第一の顧客はもちろん患者さんです。

第二の顧客は、医師、看護師、そのほか多くのコメディカルです。

医局にとっても第一の顧客は単一ではなさそうです。

第二の顧客は、存在する医局員(医師)でしょう。


病院にせよ、医局にせよ、もっと、第二の顧客に焦点をあてた

活動を行うことが、組織の成熟につながるような気がしました。

2010年11月19日金曜日

決断の本質


マイケル・A・ロベルト

決断の本質

1996年、ベスイスラエル病院とディーコネス病院が合併した。
両者はともにマサチューセッツ州ボストンの権威ある大きな医療施設だった。
合併後の病院は1000人以上の熟練した医師を擁し、
その収入は10億ドルに近かった。
しかし、合併はうまくいかなかった。
赤字が急速に拡大し、何人かのCEOは立て直しを図ったが、ことごとく失敗した。
2002年新しく就任したCEOポール・レビーが調べてみると、
それまでの経営陣が、膨大な時間と労力をかけて病院が抱える問題を分析し、
財務の健全性を取り戻すためにいくつもの案を討議していたことが分かった。
何社ものコンサルティング会社が広範な分析を実施し、立派な提案書を提出していた。
しかし、実質的な組織改革が具体化することはなかった。
ミーティングでは、議案に対する自分の部署の反応について誰も本当のことを言わない。
その場では静かに座っている。こうした行動が当たり前になっていた。
その提案に反対ならミーティングでは沈黙を守る。
そして会議室を出た後で、その場で生まれたように見えたコンセンサスを覆した。


上記は、本著で語られている、病院改革の1例です。

こうした文化を持つ病院というのは多いのではないでしょうか?

決断されたことがどうして実行されないのでしょうか?

それは決断に至るまでのプロセスに問題があるからなのです。

本著は、有効な決断に至るまでの合意形成のプロセスについて解説しています。

著者はビジネススクールの教授で、多くの実例を挙げながら、説明していきます。


以下は部分要約です。


意思決定のプロセスの『4C 』を決定する


① composition(メンバー構成を決める)

専門知識の有無、実行に移す場合に必要な人、信頼できる副心、多様性があるか

② context(背景を設定する)

・基本ルールを設定する
・冒頭の訓示にて、基本姿勢を明確化する
・ミーティングの場を社外に設定する

③ communication(対話の仕組みをつくる)

コンセンサス手法、6色ハット発想法、弁証法的討議と悪魔の代弁者

④ control(自分の立場を明確にする)

傾聴・どこまで自分の意見を伝えるか、どこまで介入するか、
どのような役割を担うか、どのように議論を締めくくるか


公正なプロセスを主導する

=他人の意見を本当に尊重している姿勢をはっきりと見せることである。

(1) プロセスのロードマップを準備する
(2) 公正な物事の見方を強調する(暫定的で、変更することもある)
(3) 積極的に意見を聞く
(4) 意思決定の根拠を説明する
(5) 意見をどのように反映したかを説明する
(6) 謝意を表明する

意思決定プロセスに対して人は批判的な心構えになる。

すべての出席者に平等に情報を与えることが大切。


実行につながる決断

発散と収束を繰り返す。

中間的な合意を作り上げる、『小さな成功』をつくる

(1) 目標と目的に合意する
(2) 前提に合意する
(3) 決定基準に合意する
(4) 選択肢を消去する(選ぶより消去したほうが効率がいい)
(5) 条件つきで合意する

要約終わり


冒頭の例の、ポール・レビーは、
コンサルト会社の提案を公表し、全員の意見を求め、
すべての意見に自ら返事を書きます。。
彼は病院の改革計画を発表し、その理由を説明します。
そして全員にその計画に対してサインを求めた。
それに引き続き、タスクフォース(作業班)を設け、
タスクフォースでの意思決定プロセスをどのように展開してほしいかを説明します
診療部長たちがタスクフォースの作業に口出しするのを控えさせ、
部長たちにタスクフォースが出した提案に対する意見や助言を求めていきます。

2010年11月13日土曜日

プレゼンテーションZEN


ガー・レイノルズ

プレゼンテーションZEN

POWER POINTを利用して、プレゼンテーションする機会がある人は

本著にて得ることが必ずあるはずです。

学会発表のスライドにも、生かすことができるはずです。


以下抜粋

Power Pointは1990年代に普及が進み、2000年までに世界中の会社や学校で当たり前のように使われるようになった。しかし、問題がなかったわけではない。実際、『Power Pointによる死』という言葉が囁かれ始めたのは、このころである。2001年、マーケティングの権威であり、ベストセラーの著者でもあるセス・ゴーディンは、ついに我慢の限界に達した。(彼はお粗末なプレゼンを見続けなければならなかったので)セスは世の中に一石を投じようと決めた。そこで彼は『最悪のPower Point』という10ページの電子ブックを書きあげ、Amazonを使って一冊2ドルで売り出した。同書は電子ブックの年間ベストセラーに輝いている

抜粋終わり


なにも、Power Point自体に問題があるわけではありません。

問題なのは、文字と数字の羅列に頼り、

それを読み上げるだけのプレゼンが問題なのです。

あなたが聴いてくれている人に本当に何か伝えたいと考えているなら

それを改善しなくてはいけません。


以下は気になった点の要約です。

1) 想像力と制約

『シンプル』『明快』『簡潔』を常に意識する

2) アナログ式に計画を練る

まずは紙やペン、ホワイトボード、ポストイットを使って、大まかなアイデアを書きとどめよう

『核となるテーマは何か?』『なぜそれが重要なのか?』という問いがカギである

もし、たったひとつの事しか聴衆の記憶に残らないとしたら、それは何であってほしいか?

3) ストーリーを作り上げる

メッセージが聴衆の心に残るようにしよう。簡潔さを心がけ、

実例やエピソードを使い、意外性を狙い、人々の感情に訴えるようにしよう

(『単純明快』『意外性』『具体性』『信頼性』『感情に訴えること』『物語性』)

Step1:ブレインストーミング(紙と鉛筆)

Step2:グループ化を行い、核となるメッセージを特定する。

プレゼンテーションは3部構成にすると理解しやすい

Step3:紙の上でアイデアをストーリーボードにまとめよう。

Step4:ソフトウェアを使ってはっきりした構成を固めていこう

4) シンプルであることの大切さ

シンプルであることは大きな力を持ち、明確性を高めることにつながっている。

しかし、それは決して単純ではないし、簡単に達成できるものでもない。

シンプルさは不要物を慎重に取り除くことによって得られる。

繊細、優雅、控え目な気品さといったコンセプトを念頭に置くとよい。

よいデザインには多くの余白がある

5) 原則とテクニック

① シグナル/ノイズ比を念頭に置き、不要なものはすべて取り除くこと

・ 取り除いても視覚的なメッセージに支障をきたさない要素は、できるだけ削るか、すべてカットする。
・ すべてのスライドに会社のロゴを入れる必要はない

② ビジュアルのほうが箇条書きよりも人々の記憶に残りやすい。

・ 1-7-7の法則:一枚のスライドには1トピックまで、テキストは最大7行まで、
  1行に使う言葉は最大7語まで

③ 余白は『無』ではない。それは大きな力を持っている。
  余白を見いだし、それを操作することによって、
  すっきりとまとまった面白みのあるスライドデザインを作り出せるようにしよう。

・ 一枚のスライドに詰め込まないで、複数のスライドに分割する
・ 画像を使って視線を誘導する
・ 対称と非対称を意識してバランスをとる
・ 3分割法を用いる

④ コントラストの原則を使って、異なった要素の間にダイナミックな違いを作り出そう。

⑤ 反復の原則を適用し、スライド全体を通じて一定の要素を繰り返そう。

⑥ 整列の原則を使って、スライド上のデザイン要素を視覚的に結び付けよう。
  
  グリッドは配列を整えるのに非常に役に立つ。

⑦ 近接の原則を用いて、関連のある要素を一つにまとめよう。

以上要約終わり


僕自身、これを読んでから、スライドづくり、プレゼン方法が一変しました。

デザインセンスは自信がありませんが、知識やスキルと練習でカバーできます。

確かに、デザインにこだわり、また、istockphotoで写真を利用することは

時間もお金もかかります。

しかし、その手間を惜しまないことは、聴いてくれている人への礼儀だと思います。

2010年11月8日月曜日

考える技術・書く技術


バーバラ・ミント

考える技術・書く技術 


(以下、amazonより抜粋)

明快な文章を書くことは、明快な論理構成をすることにほかならない。

本書は、マッキンゼーをはじめとする世界の主要コンサルティングファームで

ライティングのコースを教えるバーバラ・ミントが、独自の文書作成術を披露した本である。

著者はまず、多くの人がわかりやすい文章を書けないのは、

論理構造に問題があるからだ、と指摘する。

その上で自らが考案した「ピラミッド原則」と呼ばれる考え方を提示し、

物事を上手に論理立てて述べるテクニックを伝授していく。

序文で人の注意を引きつけるにはどうすればいいか、

相手を説得するのにどんなロジックを用いればいいか、

問題点をどうやってまとめればいいか…。

文章について人々が抱くさまざまな疑問点について、

それぞれ適切なフレームワークを用意している。

(抜粋終わり)


本著は、

第Ⅰ部:書く技術

第Ⅱ部:考える技術

第Ⅲ部:問題解決の技術

第Ⅳ部:表現の技術

からなりますが、第Ⅰ部の書く技術が特にお勧めの内容です。

分かりやすい文章を書くことは難しいことです。

しかし、ひとつのフレームワークを参考に、ひたすら書く練習をしていけば、

おのずと分かりやすい文章や、構成を身につけることができると思います。


以下は要約です。

1.ピラミッド構造の原則

(1)どのレベルであれ、メッセージはその下位グループ群を要約するものであること

(2)各グループ内のメッセージは、常に同じ種類のものであること

(3)各グループ内のメッセージは、常に論理的に順序づけられていること


2.ピラミッド内部構造の原則

(1)メッセージは縦方向に関連性を持つ(Q&A形式)

(2)メッセージは横方向に関連性を持つ(演繹法、帰納法)

(3) 頂上ポイントは読み手の疑問に答える

(4) 導入部は読み手に疑問を思い出させる


3.トップダウン型アプローチ

-ピラミッド最上部の箱を埋める

① 主題(伝えたいメインテーマは何か?)

② 主題について読み手のどんな疑問に答えようとしているか?

③ 答えは何か?


-答えを導入部に一致させる⇔重要!

① どのような状況か?⇔重要!

② どのような複雑化が生じたか?

③ 答えは読み手の疑問にあったものか?

-キーラインをみつける

① 答えから新たにどんな疑問が生じるか?

② 演繹的にこたえられるか?それとも帰納的にこたえるか

③ 帰納的にこたえるとすれば、どのような同一名詞で事柄をくくることができるか?

-サポートするポイントを組み立てる

① このレベルでQ&A形式のプロセスを繰り返す


(1) まず主題をかく。主題がはっきりしていなければ、疑問について書く。

     疑問がはっきりしていなければ状況を明確にする。

(2) 疑問の読み手はだれか?主題についての読み手のどんな疑問に答えればよいか?

(3) もしわかっていれば答えを書きなさい。答えがない場合には答えねばならないとメモしておく

(4) 状況について読み手がその通りだと納得できることを書く⇔重要!

(5) 読み手を想定してQ&A応答をやってみる

(6) 疑問と答えを再チェックする


(初心者へのポイント)

① まずは、トップダウン型に考えて構成するようにする

② 導入部分を省略しない、状況をポイントにして考える

③ 過去の出来事は導入部へ

④ 導入部の記述は読み手が合意する事項に限定する

⑤ 選択できるなら、演繹法よりも帰納法を