2011年4月22日金曜日
モチベーション3.0
ダニエル・ピンク
モチベーション3.0
原題は『Drive;The Surprising Truth about What Motivates Us』です。
ビジネス書の中で影響を受けた10冊を挙げろと言われたら、その中に入ると思います。
医者の世界で、仕事や医師としての人生のマネジメントで
満足する経験をしている人は皆無であると思います。
たいていはその医師の個性や長所を無視した数合わせのその場限りのマネジメントで
モチベーションは低下し、不平がつもり、燃え尽きていきます。
そうした現状を変えるためには、セルフマネジメントを行っていくしかありません。
そうしたセルフマネジメントを行う上でも、本著は非常に役に立つと思います。
僕も、『自律性』『マスタリー』『目標』の3つの要素を意識しながら、
モチベーションコントロールを行いながら、医療を行い、キャリアアップしていきたいです。
以下、要約です。
人類には、飢餓動因、渇動因、性的動因などの生物学的な動機づけ(モチベーション1.0)があり、生存を目的としてきた。
その後継として、周囲からの報酬や罰に対して反応するもう一つの動機づけ(モチベーション2.0)が構築された。
これは20世紀のルチーンワークには有効であった。
しかし21世紀を迎えて、モチベーション2.0が有効に機能しないことがわかってきて、
モチベーション3.0が存在することがわかってきた。
新しくアップグレードされたモチベーション3.0とは、『内発的動機づけ』である。
モチベーション2.0では、期待したほどの成果は得られず、内発的動機づけを低下させ、
創造性を破壊し、人間の好ましい言動を阻害することがわかってきた。
モチベーション2.0は常に悪影響を及ぼすわけではなく、規則的なルチーンタスクには効果を発揮する。
モチベーション2.0はタイプXの行動を前提とし、これを助長する。
この行動は、内発的な欲求よりも、外発的な欲求を活力の源とし、
活動から満足感を得るというよりも、活動によって得られる外的な報酬と結びついている。
一方、モチベーション3.0は、タイプIの行動を前提とする。
この行動は、活動によって得られる外的な報酬というより、
活動自体からもたらされる内的な満足感と結びついている。
幸いにもタイプIは生まれながらの資質ではなく、後天的に養うことができる。
モチベーション3.0のアプローチには3つの重要な要素がある。
1つは『自律性』、自分の人生を自ら導きたいという欲求のこと。
2番目は『マスタリー(熟達)』、自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動のこと。
3番目は『目的』、自分よりも大きいこと、
自分の利益を超えたことのために活動したいという切なる思いのことだ。
『自律性』
私たちの初期設定は、本来、自律的であり自己決定的である。
ところがあいにく種々の事情によりタイプIからタイプXへと変更をさせられる。
タイプIの行動を促すためには、最初に必要とされるのは自律性である。
そのためには、課題、時間、手法、チームについて自律性が必要である。
『マスタリー』
モチベーション2.0では従順な姿勢が求められたのに対して、
モチベーション3.0では積極的な関与が必要とされる。
積極的に関与して初めて、マスタリーを生み出せる。
マスタリーはフローではじまる。
フローとは、取り組んでる課題が本質的に自分の能力と整合している場合の最適経験のことだ。
日々の活動を難しすぎず、易しすぎない業務にする必要がある。
マスタリーのは3つのルールがある。
1つはマインドセット、能力は固定的でなく、無限に向上が可能であると理解する必要がある。
次にマスタリーには苦痛が伴う。
最後にマスタリーとは漸近線であり、完全にマスタリーを実現することは不可能だ。
『目的』
モチベーション3.0では、願望の対象や指針として、目的の最新化が、
利益の最大化と並んで認められている。
人間とは本質的に人生の意義や目的を探すものである。
自律性を高める戦略
10%~20%ルールを試してみる:
メイヨ―クリニックのような知名度の高い病院の医師は、
燃え尽きてもおかしくないほどのプレッシャーや要求に直面する。
だが、患者のケアや研究、コミュニティへのサービスなど、
医者自身にとってもっとも意味があることに、一週間のうち1日(20%)をあてた場合には、
仕事による肉体的、感情的な疲労を減らせることが判明した。
この方針を取り入れた医師は、そうでない医師と比べて、燃え尽きたケースは半数であった。
(Archives Internal Medicine 2009;169:990-995)
目標や、時間、手法、チームの設定に自律性を持たせる。
マスタリーに導く戦略フローを意識して行う
意図的な訓練を行う。
とにかく反復する。
批判的なフィードバックを絶えず求める。
改善すべき点に厳しく焦点を合わせる。
訓練の過程の精神的、肉体的疲労を覚悟する
目的に関する戦略
常に目的は何かを問いかける
2011年4月15日金曜日
アイデアの力
チップ・ハース ダン・ハース
アイデアの力
以前紹介した『アイデアのつくり方』では、具体的なアイデアの作り方の話でした。
本著では、作り出されたアイデアを広めるための具体的な方法が書かれています。
『急に売れ始めるにはワケがある』では、
アイデアが一気に劇的に広がる瞬間、ティッピングポイントを迎えるための
3つの要因を挙げています。
『少数者の法則』『粘りの要素』『背景の要素』。
今回は、このうち、粘りの要素に焦点をあて、その具体的な方法を教えてくれます。
記憶に焼きつくアイデアとは?
6つの原則、単純明快さ、意外性、具体性、信頼性、感情、物語、
頭文字をとって、SUCCESの6つの要素からなります。
具体的に見てみると。。。
(1)単純明快である
核となる部分を見いだし、核となる部分を伝える
(2)意外性がある
関心をつかむ;驚きと、関心をつなぎとめる;興味に訴える
(3)具体的である
理解と記憶を促す、協調を促す
(4)信頼性がある
(5)感情に訴える
(6)物語性
2011年4月8日金曜日
リスク心理学入門
岡本 浩一
リスク心理学入門
前回の『リスク ~神々の反逆』に続いて、リスクについてです。
リスク受容の評価には3つの方法があります。
1つは、専門家による判断。
1つは、リスクが発生するまでのステップを解析し、評価する方法。
もう1つは、リスクとベネフィットのバランスから判断する方法です。
そして、リスク受容に関する要素についてです。
受動的であり、リスクに関するベネフィットが大きい場合にリスク受容はしやすくなります。
そしてリスク受容とは、我々の内的なリスクのイメージで行われる、
つまり、心理的な要因で決まってきます。
特に、『恐ろしさ』『未知性』の2つの要因が大きくかかわってきます。
こうしたことを理解しておくことは、
過度に副作用などのリスクを恐れるあまり、
治療を受けることに消極的となる患者に、
リスク受容を助け、有効な治療を受けることを了解させる助けになると考えられます。
以下要約です。
リスク受容に関する3つの方式
(1) 専門的判断方式
倫理的基準・質の基準・技術的な基準を用いて判断する
専門的な判断は十分に機能していると期待されるが、さまざまな落とし穴もある
(2) リスク過程解析方式
リスクとなる事象が起こるまでの過程を分析し、その事象がどれぐらいおこりやすいか、
または、起こりにくくするためにはどんなチェックを加えるべきかを検証する。
(3) リスク-利得分析方式
リスクと利得を計算して、指標として表現する
リスクは以下のような要素が受容に影響する。
① 能動的リスクと受動的リスク
受動的か能動的かは主観的な問題であるが、受動的か能動的かな判断で、
受動的なリスクは能動的なリスクに比較してかなりリスク受容されやすい。
能動的なリスクのほうが1000倍のリスクでも受容される傾向がある。
② 利得とリスク受容
利得が大きくなれば、その3乗の大きなリスクでも受容される
上記のような方法で、リスクは評価できるのであるが、
我々の『リスク』に対する反応は、
結局は、我々の『内なるリスクのイメージ』に対する反応であると考えることが妥当である。
リスク受容はすぐれて心理的な要因によってきまるとみなければならないことになる。
リスクイメージの構成因子は以下の因子がある。
(1) 恐ろしさ因子
(2) 未知性因子
(3) 災害規模因子
とくに、恐ろしさ因子と未知性因子が代表的な因子である。
リスクの認知というのは、非常に生起確率の低い事象の認知である。
非常に生起確率が低い場合、正しい認知が得られる可能性は相対的に低くなるところが、
リスク認知の問題の1つである。
同時に、それにもかかわらず、自分の認知が高いと考えている度合いが高い傾向にある。
リスク認知の理論としてプロスペクト理論がある。
確率を伴う選択肢の認知は、
合理的な確率期待値モデルによる判断と一致際ないことが多々みられる。
ポジティブな選択肢の場合には、リスク嫌忌的な認知が、
ネガティブな選択肢の場合には、冒険的な認知が行われやすくなる。
この場合、ポジティブ・ネガティブの差は主観的な問題であるから、
選択肢の内容の提示の仕方、認知の仕方によって、異なってくることがあり得る。
リスク ~神々への反逆
ピーター バーンスタイン
リスク ~神々への反逆
医療において、リスク処理は必須の過程である。
治療や検査が100%望むべき結果をもたらすことはなく、
稀な望まない結果(リスク)が起こりうる可能性をどう対処するかに必ず迫られる。
リスクをどう患者と共有するかは非常に悩ましい問題である。
本著では、ギリシャ・ローマ時代から現在まで、人間はどのようにして『リスク』を捉え、
コントロールしようとしてきたのか、
リスクの謎に挑んだ天才たちの驚くべき人間ドラマを描いていきます。
その歴史を通して、リスクとは何かに迫っていきます。
以下要約です。
『リスク』という言葉は、イタリア語の『risicare』という言葉に由来する。
この言葉は『勇気を持って試みる』という意味を持っている。
この観点からすると、リスクは運命というよりは選択を意味しています。
何千年もの歴史と今日われわれが生きている時代とを区別するものは何でしょうか?
現在と過去との一線を画する画期的なアイデアはリスクの考え方に求められるのです。
過去、人類がこの境界を見いだす以前には、未来はそれ以前のかがみであり、
漠然とした神のお告げとか予期しうる事態について独占的に知識を有する占い師が闊歩する時代でした。
現在、リスクをどのように理解し、またどのように計測し、
その結果をどのようにウエートづけるかを示すことによって、
リスクを許容するという行為を今日の西側社会を動かす基本的な触媒行為に変えていきました。
リスクに対処しうる能力と、
そのような能力を備えた上でリスクを取りながら将来に向けての選択を行うことこそが、
経済システムを発展させるエネルギー源なのです。
リスクにかかわる物語は、全般にわたって、
次の2つの対立する考え方をもつ人々の緊張関係で特徴づけられています。
一方は、最善の意思決定は計量的手法と数字に裏付けられており、
過去のパターンに依存していると主張する人々である。
他方は、その意思決定を、不確実な将来に関するより主観的な信念の程度に基づいて行う人々である。
これは未だかつて決着を見ない論争でもある。
そして、雷光に打たれる確率は極めて小さいが、『多くの人々は、雷の音には過度の恐怖感を示す』。
そして『被害を受けることの恐怖感は、単に被害の大きさだけではなく、
その事象の確率にも比例すべきであり』、これはもう一つの重要な革命といってもよい。
この考え方には、事象の大きさと確率の双方が意思決定に影響すべきであることが示されている。
すなわち、意思決定にはある特定の結果が生起することを希望するその期待の大きさと、
その結果が起こりうる確率に対する信念の程度、という2つの要因が含まれる。
(つまり、リスクの要素は、その事象の影響の大きさと、
その事象の起こりうる確率で構成される。
そして、人々がそのリスクに対してどう考えるかに関しては、
影響の大きさや確率を過去のパターンから推測される数字を重要視する人と、
影響の大きさや不確実性に対する信念を重要視する人に分かれる)
そして、リスク許容行為というのは、将来の結果を確実に知ることはできなくても、
既に行った意思決定から生じるある結果にかけることを意味する。
つまり、リスク管理の本質は、ある程度結果を制御できる領域を最大化する一方で、
結果に対して全く制御が及ばず、結果と原因の関係が定かでない領域を最小化することにある。
後は、『平均への回帰』に関する問題、『不確実性』に関する問題など、
リスクに関する多岐の話題を取り扱っていきます。
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