2013年12月18日水曜日

代替医療のトリック

サイモン シン

代替医療のトリック





鍼、カイロプラティック、ホメオパチー、ハーブ療法といった
 
代替医療が有効であるかどうか科学的に迫っていきます。

 その科学的アプローチの方法は、科学的根拠にもとづく医療、
 
すなわちエビデンス=ベースト・メディシン(EBM)として知られる方法です。

 

内容は、一般向けにわかりやすく書かれていますが、

医師が読んでも十分耐えられる質となっています。

っというか、むしろ、医師の中でここまで

科学的根拠にもとづく医療をきちんと行えている人は少ないのではないでしょうか?

 

そういったわけで、特に、医師におすすめする一冊です。

EBMを習得している人は、
 
代替医療のEBMがどうなっているか楽しみながら理解できます。
 
EBMを習得していない人には、
 
EBMを習得する足がかりにしていただけたらと思います。

 

著者らもこう本書の役割を説明しています。

第Ⅰ章で、科学的方法について説明します。
 
科学者たちは治療法の効果を、
 
実験と観察によってどのように判定するかを見ていきます。

著者はもしあなたが科学の力に懐疑的な人でも、
 
せめて第Ⅰ章は読んでもらいたいといいます。そしてこう続けます。

 
しかし第Ⅰ章を読んでもなお、

科学が代替医療の効果を判定する最善の方法だとは思えないという人もいるだろう。

そういう人は科学が何を言おうと、

自分の世界観を手放す気はないのかもしれない。

『代替医療はどれもこれもクズだ』という確固たる信念の持ち主もいるだろうし、

逆に、『代替医療はあらゆる痛みや病気を癒してくれる万能薬だ』といって譲らない人もいるだろう。

本書はそういう人のための本ではない。

科学的方法で真実を判定できると考えるつもりが全くないのなら、

第Ⅰ章を読むことすら意味はない。。。

しかしもちろん、われわれの願いは、あなたが結論を急がず、
 
本書を読み進めたいと思ってくれることだ。

 

 さて、第Ⅱ章から第Ⅴ章をへて、それまで見てきた科学的根拠によると、
 
大部分の代替医療は、
 
多くの症状についてプラセボ効果を上回る効果はないと言ってよいことがわかります。
 
ここで、代替医療をめぐる問題の中でも、もっとも議論のある、
 
きわめて重要な問題の一つが浮かび上がる。
 
代替医療がほぼプラセボ効果だけに頼っているとしても、
 
代替医療のセラピストがプラセボ効果を利用して
 
病気の人の力になってはいけない理由があるだろうか?という問題だ。

 

これに対して著者らは、
 
医者をはじめとする医療関係者がプラセボ効果のために代替医療を用いることは
 
間違いだと、強く信じていると述べています。

その根拠は、医師と患者との関係が、
 
嘘のない誠実なものであってほしいと思うからということです。
 
もしも医師がホメオパシーの薬を処方する決心をすれば、
 
プラセボ効果を引き出すためには患者に嘘をつかなければならないからです。

 

さらに、代替医療がこれだけ必要とされている現状の責任の一旦は
 
医師にもあると著者らは言及しています。
 
そうした第一の医師は、患者に代替医療を勧め、
 
じつはその治療法に効果がないことを知らない無知な医師。
 
第二の医師は、治療するまでもない患者に満足感を与えようとして、
 
代替医療を勧めてしまう不甲斐ない医師。
 
そして第三の医師は、患者に不満を抱かせて代替医療に向かわせる、
 
配慮の足りない医師である。

 

うーん、耳が痛いです。
 
安易に患者さんが代替医療に手を出さないように、
 
医師としての態度を見直す必要を感じました。

2013年11月13日水曜日

幸せがずっと続く12の行動習慣

幸せがずっと続く12の行動習慣

ソニア・リュボミアスキー



ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』に続いて、
 
ポジティブ心理学からの一冊です。

 
 
ポジティブ心理学テンプルトン賞を受賞した第一線の研究者リュボミアスキーが、

「科学的に幸せになる方法」を解説します。

一般向けですが浮ついた所がなく、証拠のみに依拠して提言しています。

 
 
著者はこう宣伝しています。

本書の最も大事な点は、これが科学的に証明された結果だということです。
 
私やほかの社会心理学者たちが開発してきた、
 
幸福感を高める方法は本書の鍵となる重要な脇役です。
 
(もちろん、主役はあなたです)
 
私の話はリサーチ科学者のものであって、
 
臨床医やライフコーチや自己啓発の指導者のものではありません。
 
私の知る限り、本書は、人生でもっと幸せになるための方法を解いた本として、
 
初めて実際にリサーチを行なった人間が著したものです。

 

さて、まず第1に理解する必要があることは、

『幸福度の決定するための要因は、

遺伝による要因が50%、

環境による要因が10%、

意図的な行動による要因が40%』

だということです。


遺伝的に幸福だと感じやすい人と感じにくい人がいるということです。
 
この要因はどうしようもありません。

そしてなんと、裕福か貧乏か、
 
健康か病気かなど生活環境や状況による違いは
 
幸福度の10%の要因に過ぎないのです。
 
 

幸福になるための最大の鍵は、
 
遺伝子の性質を変えることにあるのではなく、
 
環境を変えること
 
(つまり、富や魅力、もっといい同僚を求めること)にあるのではなく、
 
『私たちの日々の意図的な行動』にあるのです。
 
そして本書ではその具体的な12の方法を紹介します。

 

第2のステップです。
 
『オックスフォード幸福度調査』により幸福度を数値化します。
 
そして著者が開発した『幸福行動診断テスト』を行います。
 
そうすることにより、本書で紹介されている科学的に実証されている12の方法のうち
 
あなたに適している方法が分かります。
 
著者はそうした方法のうち、2-3つの方法をまずは試すことを薦めています。

 

第3に、幸せがずっと続くためのベースとなる、
 
重要な5つのコツを上げています。
 
幸福度を上げる行動は努力が必要ということです。
 
継続が必要であり、同じことをやり続けるのではなく変化が必要である。
 
そして、幸福度を高めあえる人のつながりを作っていくということです。

 

さて、幸福度がちょっと低めだった僕は、
 
おそらく遺伝的に幸福度を感じにくい体質なのでしょう。
 
さっそく、幸福度を高める行動を開始して、
 
幸福度を高める習慣を身につけることにします。
 
(そして三日坊主に終わりました)

2013年9月11日水曜日

あなたはなぜチェックリストを使わないのか?

あなたはなぜチェックリストを使わないのか?
 
アトゥール・ガワンデ
 
 
 
 
チェックリストの力を信じる外科医アトゥール・ガワンデが提言する
「チェックリスト」作成のススメです。

著者は外科医であると同時にジャーナリストでもあり、
医療だけではなく、経営、投資、飛行機、建築、料理などでも
チェックリストが使われており、
驚くような成果が生まれていることを事例を通じて紹介していきます。

(抜粋;ビジネス書の社より:http://people.weblogs.jp/books/2011/12/checklist.html

 
たとえば、ジョンズ・ホプキンス病院の集中治療の専門家、
ピーター・プロノボスト医師が中心静脈カテーテルの挿入の感染予防の
チェックリストを作った。

1.石鹸で手を洗う
2.患者の皮膚をクロルヘキシジンで殺菌する
3.滅菌覆布で患者を覆う
4.マスク、滅菌ガウン、滅菌手袋をつけ、カテーテルを挿入する
5.刺入点をガーゼで覆う
という手順でした。

 
看護婦に1ヶ月医者を観察させると、
三分の一以上の患者で一つ以上の手順が飛ばされていることが分かりました。

そこで、看護婦に医師が一つでも手順を飛ばすと、
カテーテル挿入を止める権限を与えたところ、
カテーテル挿入から10日間の感染率が11%から0%まで下がったのです。


 
そこで、プロノボスト医師は全米中を飛び回り、チェックリストの有用性を語り、
導入を推奨したが、実際にチェックリストを受け入れた医師は少数であり、
ある医師は馬鹿にされたと思って怒り出し、
ある医師は効用そのものに懐疑的だったのです。

 
しかし、いかに安全に手術を行うかという問題に直面していた
著者のガワンデ医師は、チェクリストの力を信じて、
様々な業界(主に航空・建築)の事例を参考にしながら、
チェックリストを作成していきます。


そしてその結果は、死亡率は,チェックリスト導入前は 1.5%であったが,
導入後には 0.8%に低下し、
合併症は,ベースラインでは患者の 11.0%で発生したが,
チェックリスト導入後は 7.0%に低下するという、
目を見張る結果を生み出すのです。


 
しかし、チェックリストがその後ひろく使用されるようになったわけではありません。


なぜ、チェックリストは使われないのだろうか?
手間がかかる、面白くないといった理由もあるが、
本質的な理由は、優秀な人たちはチェックリストを使うことを
恥ずかしいと思っていることではないだろうか。
複雑で危険な状況でも、度胸と工夫で乗り切ってしまえると思い込んでいる。

この本のもっとも重要な指摘はこの部分である。
どの分野にもプロフェッショナリズムがある。
3つの条件があると思われる。
『無私である』、『腕がよい』、『信用に足りる』ということである。
しかし、航空機業界では、四つ目として『規律』を付け加えた。
良くできた手順には従い、必ず他者と協力しあうことだ。

 
それではよいチェックリストの作り方はどんなものだろうか?
いくつかのポイントがあるという。

ポイント1:いつチェックを行うか、つまり一時停止点をはっきり決める
ポイント2:「行動のち確認」か、「読むのち行動」のいずれのチェックリストにするかを決める
ポイント3:長すぎない。原則として項目は5~9個
ポイント4:キラーアイテム(飛ばされがちだが致命的な手順)に絞る
ポイント5:文章がシンプルである
ポイント6:見た目がよく、できれば、1ページ以内
ポイント6:必ず実世界で試用されている

 

最後にチェックリスト作成のためのチェックリストが掲載されています。

以下でWHO作成の様々なチェックリストを見ることができます。