2010年11月19日金曜日
決断の本質
マイケル・A・ロベルト
決断の本質
1996年、ベスイスラエル病院とディーコネス病院が合併した。
両者はともにマサチューセッツ州ボストンの権威ある大きな医療施設だった。
合併後の病院は1000人以上の熟練した医師を擁し、
その収入は10億ドルに近かった。
しかし、合併はうまくいかなかった。
赤字が急速に拡大し、何人かのCEOは立て直しを図ったが、ことごとく失敗した。
2002年新しく就任したCEOポール・レビーが調べてみると、
それまでの経営陣が、膨大な時間と労力をかけて病院が抱える問題を分析し、
財務の健全性を取り戻すためにいくつもの案を討議していたことが分かった。
何社ものコンサルティング会社が広範な分析を実施し、立派な提案書を提出していた。
しかし、実質的な組織改革が具体化することはなかった。
ミーティングでは、議案に対する自分の部署の反応について誰も本当のことを言わない。
その場では静かに座っている。こうした行動が当たり前になっていた。
その提案に反対ならミーティングでは沈黙を守る。
そして会議室を出た後で、その場で生まれたように見えたコンセンサスを覆した。
上記は、本著で語られている、病院改革の1例です。
こうした文化を持つ病院というのは多いのではないでしょうか?
決断されたことがどうして実行されないのでしょうか?
それは決断に至るまでのプロセスに問題があるからなのです。
本著は、有効な決断に至るまでの合意形成のプロセスについて解説しています。
著者はビジネススクールの教授で、多くの実例を挙げながら、説明していきます。
以下は部分要約です。
意思決定のプロセスの『4C 』を決定する
① composition(メンバー構成を決める)
専門知識の有無、実行に移す場合に必要な人、信頼できる副心、多様性があるか
② context(背景を設定する)
・基本ルールを設定する
・冒頭の訓示にて、基本姿勢を明確化する
・ミーティングの場を社外に設定する
③ communication(対話の仕組みをつくる)
コンセンサス手法、6色ハット発想法、弁証法的討議と悪魔の代弁者
④ control(自分の立場を明確にする)
傾聴・どこまで自分の意見を伝えるか、どこまで介入するか、
どのような役割を担うか、どのように議論を締めくくるか
公正なプロセスを主導する
=他人の意見を本当に尊重している姿勢をはっきりと見せることである。
(1) プロセスのロードマップを準備する
(2) 公正な物事の見方を強調する(暫定的で、変更することもある)
(3) 積極的に意見を聞く
(4) 意思決定の根拠を説明する
(5) 意見をどのように反映したかを説明する
(6) 謝意を表明する
意思決定プロセスに対して人は批判的な心構えになる。
すべての出席者に平等に情報を与えることが大切。
実行につながる決断
発散と収束を繰り返す。
中間的な合意を作り上げる、『小さな成功』をつくる
(1) 目標と目的に合意する
(2) 前提に合意する
(3) 決定基準に合意する
(4) 選択肢を消去する(選ぶより消去したほうが効率がいい)
(5) 条件つきで合意する
要約終わり
冒頭の例の、ポール・レビーは、
コンサルト会社の提案を公表し、全員の意見を求め、
すべての意見に自ら返事を書きます。。
彼は病院の改革計画を発表し、その理由を説明します。
そして全員にその計画に対してサインを求めた。
それに引き続き、タスクフォース(作業班)を設け、
タスクフォースでの意思決定プロセスをどのように展開してほしいかを説明します
診療部長たちがタスクフォースの作業に口出しするのを控えさせ、
部長たちにタスクフォースが出した提案に対する意見や助言を求めていきます。
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