2011年4月8日金曜日
リスク心理学入門
岡本 浩一
リスク心理学入門
前回の『リスク ~神々の反逆』に続いて、リスクについてです。
リスク受容の評価には3つの方法があります。
1つは、専門家による判断。
1つは、リスクが発生するまでのステップを解析し、評価する方法。
もう1つは、リスクとベネフィットのバランスから判断する方法です。
そして、リスク受容に関する要素についてです。
受動的であり、リスクに関するベネフィットが大きい場合にリスク受容はしやすくなります。
そしてリスク受容とは、我々の内的なリスクのイメージで行われる、
つまり、心理的な要因で決まってきます。
特に、『恐ろしさ』『未知性』の2つの要因が大きくかかわってきます。
こうしたことを理解しておくことは、
過度に副作用などのリスクを恐れるあまり、
治療を受けることに消極的となる患者に、
リスク受容を助け、有効な治療を受けることを了解させる助けになると考えられます。
以下要約です。
リスク受容に関する3つの方式
(1) 専門的判断方式
倫理的基準・質の基準・技術的な基準を用いて判断する
専門的な判断は十分に機能していると期待されるが、さまざまな落とし穴もある
(2) リスク過程解析方式
リスクとなる事象が起こるまでの過程を分析し、その事象がどれぐらいおこりやすいか、
または、起こりにくくするためにはどんなチェックを加えるべきかを検証する。
(3) リスク-利得分析方式
リスクと利得を計算して、指標として表現する
リスクは以下のような要素が受容に影響する。
① 能動的リスクと受動的リスク
受動的か能動的かは主観的な問題であるが、受動的か能動的かな判断で、
受動的なリスクは能動的なリスクに比較してかなりリスク受容されやすい。
能動的なリスクのほうが1000倍のリスクでも受容される傾向がある。
② 利得とリスク受容
利得が大きくなれば、その3乗の大きなリスクでも受容される
上記のような方法で、リスクは評価できるのであるが、
我々の『リスク』に対する反応は、
結局は、我々の『内なるリスクのイメージ』に対する反応であると考えることが妥当である。
リスク受容はすぐれて心理的な要因によってきまるとみなければならないことになる。
リスクイメージの構成因子は以下の因子がある。
(1) 恐ろしさ因子
(2) 未知性因子
(3) 災害規模因子
とくに、恐ろしさ因子と未知性因子が代表的な因子である。
リスクの認知というのは、非常に生起確率の低い事象の認知である。
非常に生起確率が低い場合、正しい認知が得られる可能性は相対的に低くなるところが、
リスク認知の問題の1つである。
同時に、それにもかかわらず、自分の認知が高いと考えている度合いが高い傾向にある。
リスク認知の理論としてプロスペクト理論がある。
確率を伴う選択肢の認知は、
合理的な確率期待値モデルによる判断と一致際ないことが多々みられる。
ポジティブな選択肢の場合には、リスク嫌忌的な認知が、
ネガティブな選択肢の場合には、冒険的な認知が行われやすくなる。
この場合、ポジティブ・ネガティブの差は主観的な問題であるから、
選択肢の内容の提示の仕方、認知の仕方によって、異なってくることがあり得る。
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