2012年7月14日土曜日

リスクリテラシーが身につく統計的思考法

ゲルト・ギーゲレンツァー

リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで


完全に医療関係者向けの内容でしょーと思える医療に特化した例題ばかりで、

むしろ、医者にこそ、読んでほしい一冊です。


まずは問題から!!(答えは最後)

40歳の女性が乳がんに係る確率は1%である。

また乳がん患者が、乳房X線検査で陽性になる確率は90%である。

乳がんでなかったとして、それでも検査結果が陽性になる確率は9%である。

さて、検査結果が陽性とでた女性が実際に乳がんである確率はどれくらいか?



健診の結果を説明する機会は多くあります。

しかし、実際にこのように、

偽陽性や偽陰性の可能性まで含めて説明することはほとんどないでしょう。

そして、偽陽性、偽陰性の可能性を説明しようとしても、

その具体的な数字を入手することは日本ではけっこう困難です。

そして具体的な数字が入手できたとしても、

上記の例題を医師が理解すること、

さらには患者さんとその数字をうまく共有できることはさらに困難です。

患者さんがこうした確率を教えられ、

判断を求められること(インフォームド・コンセント)を患者が喜ぶか、

そして喜んだとしてきちんと理解して判断できるように医師が援助できるかと言われると、

多くの医師は不可能だと思うでしょう。

そして、実際、こうしたきちんとしたインフォームド・コンセントは行われていないのが現実です。


それでも、著者は、医師と患者では治療をめぐる利害が違うからこそ、

患者には情報を提供して、

その情報を元に自分で治療法を選択できるようにすべきだと主張します。

そのためには、医師はもちろん、

患者もこのような確率的な情報を理解できるようにならないといけないといい、

そして本著ではその方法を教えてくれます。


まずは第1のステップ。

確実のものなどなにもなく、実世界は不確実であることを知ること。


第2のステップ。

不確実性(リスク)に対して無知であることを自覚する。

その原因は内的な理由と外的な理由がある。

内的な理由に対しては、リスクを推計するツールを使えるようにする。

外的な理由に対しては、リスクの推計を邪魔しようとしている勢力があることに気づくことである。


第3のステップ。

相対リスクではなく、絶対リスクを、確率ではなく自然頻度を使うようにする。

そして、コミュニケーションがとれるようにして、

健全な統計的な思考を考える習慣にすることである。



最後に、一番初めの例題の答えは約10%です。

これも著者が言うように確率ではなく、

自然頻度で考えれば理解できるようになります。


100人の女性を考えよう。

このうちひとりは乳がんで、たぶん検査結果は陽性である。

乳がんでない残りの99人のうち、9人はやはり検査結果が陽性になる。

したがって、全部で10人が陽性である。

陽性になった女性たちのうち、ほんとうに乳がんなのは何人だろう?

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